森びとの絵本


 サルと人と森

... サルが言いました。人間最悪の思想を改めろ、と

このたび、当会は大人の絵本と称して『サルと人と森』を出版しました。原文は、石川啄木著『林中の譚』ですが、これを石川啄木記念館の学芸員・山本玲子さんが訳しました。絵は、多摩美術大学卒業生の鷲見春佳さんが描いてくれました。「文明の岐路、歴史の大転換期」を向かえている私たちが、今の生活や生き方を根本から見直すきっかけを、石川啄木の『林中の譚』は示しています。多くの皆さんに読んで頂きたいものです。一冊・1,000 円でお分けしています。ご希望の方は森びと事務局までご連絡ください。

こちらから朗読を聴くことができるようになりました♪

朗読:浜崎俊文(元東海大学付属浦安高等学校教諭)
制作:東海大学付属望星高等学校

日ごろから山に木を植え、山から森と生きる知恵を学んでいる東海大学付属望星高等学校の生徒の皆さんによる作品です。とても素敵な作品に仕上がっていますので是非お聞きください。

サルは言いました。

 ああ、とうとう人間の最悪の思想を吐き出したな。
 人間はいつの時代にも木を倒し、山を削り、川を埋めて、
 平らな道路を作って来た。
 だが、その道は天国に通ずる道ではなくて、
 地獄の門に行く道なのだ。
 人間はすでに祖先を忘れ、自然にそむいている。
 ああ、人間ほどこの世にのろわれるものはないだろう。

サルはそう言い終わると、
人間が気の毒でたまらなくなりました。

木の下の人間は、サルに真のことを言われたと感じつつも、
しかし、それを認めることはできませんでした。
そして腹をたて、歯ぎしりをして林を出ようとしました。


人間は森や自然にもっと謙虚になろう! 
横浜国立大学名誉教授 宮脇昭


 歌人として有名な石川啄木は素晴らしい哲学者であり、人間の正しい生き方を見極める先見性を持った思想家である。今からちょうど102 年も前に「サルと人と森」の関係をわかりやすく説いている。今、私たちが読んでも本当に現代の人間に当てはまることを啄木はすでに102 年前に盛岡中学校の校友会雑誌に発表している。人間が間違いなく未来を生き延びるためには、もう少し森や自然に謙虚でなくてはならない。人間は科学的には森の寄生者、多彩な生物社会の一員としてしか、持続的には生きていけない。そして生物としての生き方、プラス人間の知性や感性をもって着実に現場から本物志向で生きなければいけないことをいみじくもこの寓話によって示している。


現代人の迷路を脱するヒントはこの絵本にある
NPO法人森びとプロジェクト理事長 岸井成格


今、世界も日本も文明の岐路に立っています。歴史的な大転換期です。近代・現代文明が行きづまり、あらゆる分野で矛盾やホコロビが噴出しています。その最先端の問題が、地球温暖化と環境破壊です。そのことに対する危機感から、人類の意識も大きく転換をせまられています。 文化人類学者のトール・ヘイエルダールさんは、NHKのテレビで語っていました。「進歩の行き先は何ですか?その目的は何ですか? 突き詰めれば『人が笑顔で幸せに暮らせること』ではないですか? 人の幸せは、便利なものに囲まれていたり、ハカリにかけて計るものではありません。幸せは感じるものです」と。人はようやくそのことに気づき始めました。どうしたら迷路を脱することができるのか、手探りが始まりました。
その解答の一つが、この絵本にあります。